「最近元気がないなぁ」「羽を膨らませてじっとしていることが多い」
もしかしたら中毒症かもしれません。
中毒というと大げさに聞こえるかもしれませんが、実は鳥たちは人間とは比べ物にならないほど毒に対して敏感な生き物です。飼い主のちょっとした油断が、命に関わる事態を招くこともあります。
この記事では、鳥の中毒症についての基礎知識から、家庭に潜む意外なリスク、そしてもしもの時の対応までをまとめています。
・鳥の中毒症とは?
中毒症とは、有害な物質を体内に取り込むことで体調に異常をきたす状態のことです。
鳥は体が小さく、ほんのわずかな量の毒でも重篤な症状を引き起こすことがあります。
特に呼吸器や神経系への影響が出やすく、急激に体調が悪化するケースも。
症状が現れるまでにタイムラグがあることもあり、「昨日は元気だったのに…」と突然の異変に戸惑うことも少なくありません。
・家の中に潜む”意外な毒”
①食べ物による中毒
鳥は人間と違い、消化器系がとても敏感です。人間が普通に食べられるものでも、鳥にとっては「毒」になる場合があります。
・アボカド
「ペルシン」という成分が心臓に作用し、不整脈や呼吸困難を引き起こすことがあります。少量でも危険。
・チョコレート
「テオブロミン」や「カフェイン」が中枢神経を刺激し、けいれん、心拍異常、最悪の場合は死亡することも。
・コーヒー、エナジードリンクなど
カフェインを含む飲み物は興奮状態、震え、けいれんの原因に。
・ネギ類(玉ねぎ、にんにくなど)
赤血球を壊す「アリルプロピルジスルファイド」が含まれており、貧血や血尿などの症状を引き起こします。
・アルコール
ごく少量でも神経系に深刻なダメージ
②調理器具・家電製品の有毒ガス
・テフロン加工(フッ素樹脂加工)された調理器具
特に空焚きすると有毒ガスが発生。鳥の肺は非常に繊細な構造をしており、このガスを吸い込むと短時間で深呼吸で呼吸困難や突然死を引き起こす可能性があります。
・加湿器用アロマオイル・超音波ディフューザー
揮発した成分が鳥の呼吸器を刺激します。天然成分でも安心とは限らず、ユーカリー、シトラス系などは特に危険。アロマ系は焚かない方が良いです。
③芳香・清掃・衛生用品
・芳香剤・消臭スプレー・除菌スプレー
揮発成分が空気中に残りやすく、鳥の呼吸器に刺激を与えます。吸い込むことで肺や肝臓に負担がかかることも。
・漂白剤・洗剤(特に塩素系)
使用中の蒸気、または誤って舐めてしまうことで中毒のリスク。寒気が不十分な状態では特に危険です。
④煙・揮発性物質
・タバコの煙(副流煙)
ニコチンやタール、その他の有害物質が肺を直接傷つけます。受動喫煙でも中毒症状が出ることがあります。
・お香・キャンドルの煙
香料や燃焼時に出る煙も有害成分を含むことがあり、呼吸器トラブルを起こす可能性があります。
⑤観葉植物・花
ポトス、ユリ、アイビーなど
葉や茎に含まれる成分が有毒。鳥がかじってしまうと嘔吐、下痢、神経症状などを引き起こすことがあります。
⑥金属中毒
・鉛・亜鉛・銅などの金属を含む製品
おもちゃなどのパーツ、金属製の鈴や鍵、ペンキの剥がれなどから金属を摂取すると、体内で中毒を起こします。嘔吐や下痢、羽毛の異常、けいれんなどの症状があります。
★以下の代表的な症状を意識しておいて下さい
・羽を膨らませてじっとしている
・食欲不振、元気がない
・吐く、下痢をする
・呼吸が早くなる、苦しそうにする
・足が震える、けいれんを起こす
・意識が朦朧とする
「なんとなくおかしい」と感じたら、迷わず動物病院を受診してください。
・鳥が中毒を起こしたかもしれないときの応急処置
中毒症状を起こしたかもしれない時は、動物病院で診てもらう必要があります。家で簡単にできる応急処置をまとめます。
①原因物質からすぐに遠ざける
・食べていたもの、吸い込んでいた煙・ガスなどの原因をすぐに取り除きます。
・ゲージの近くでスプレーや調理をしていた場合は、すぐに換気を行いましょう。
②水を与える
・口に入れた毒物を薄める目的で、少量の水を与えるのは1つの方法です。ただし誤嚥のリスクがありますので無理に与えなくてもいいです。
③無理に吐かせない
・鳥は嘔吐をコントロールできません。無理に吐かせる行為はかえって危険です。
④保温して安静にさせる
・30度くらいの保温環境(ヒーターや使い捨てカイロをゲージに貼る)を整えて、できるだけ静かに休めてあげてください。
⑤異変の記録・持参
動物病院に行く際に、以下の情報を持っていくと診断・処置がスムーズです。
・中毒の原因になった可能性のある物質
・いつ、どれくらい摂取したか
・症状の出た時間や状態の変化
・排泄物や吐いたもの(可能ならティッシュなどに包んで持参)
鳥にとっての「安全」と「危険」は、人間の常識と違う
私たち人間にとっては何気ない生活の一部でも、鳥にとっては命に関わる「毒」になりうるということを意識することが大切です。
とくに香りのあるもの、上記、空気に混ざるガス系の物質は、気付かないうちに影響を及ぼすことがあるため、「見えないリスク」に対する意識がとても大切です。